死にたい夜にかぎって 6話(最終回) 感想|夢でまた逢えたなら
「よく出来たドラマだった」とか「素敵な終わり方だった」とか
一言でまとめるのは勿体無いくらい、二人の関係に心揺さぶられた最終回でした。
別れ話となるとしんみりさせられる内容も多い中、
思い出の街を歩いて、当時を語って、「最高に楽しい時間の無駄づかい」という手紙を渡して…
ああ、こんな風に"二人だけの秘密"を共有し尽くした上で
1つの出会いにピリオドを付けられたら、どんなに素晴らしいか…と、
ちょっと羨ましくもなってしまいます。
本作の魅力はやはり「多くを語らない」作りだと思っていて、
最終回でもそれが一貫して貫き通されていました。
物語は震災でアスカ(山本舞香)の心が壊れていく場面から始まり、
OPが終わった後は時間軸を1ヶ月飛ばした状態で進みます。
その間に描かれるであろう"気持ちが徐々にすれ違っていく二人の姿"を
一切盛り込まない手法は、喧嘩するけど仲直り…というこれまでの話や
冒頭で既に印象強いシーンが描かれたために、
視聴者に自ずと想像させる"行間"の役割にもなっていたと思いますし、
また、震災をきっかけに一気に浩史(賀来賢人)の事を信じられなくなってしまった
アスカの繊細で複雑な心情をも表しているようでした。
最終回になって初めて登場したホームレスも、
普段は何しているだとか、今の姿に至るまでの背景とかは語られないままではありましたが、
逆にそうした事で、「どんな人もどうせいつかは縮んで死んでしまうから、
若いうちに楽しんだ方が良い」という言葉が、ドラマ用に作られたものではない
飾り気のない言葉として、ストンと胸に響くものになっていたと思います。
そして、本作の集大成かのように、湯豆腐やアサリの話をしながら
街を一軒ずつ訪れる二人を映した後は…
とうとう来てしまった別れの時。
新幹線で別れを告げるシーンには、涙を流さずにはいられません。
「もっと一緒に美味しいもの食べに行けば良かったね」
「もっとアスカの曲をちゃんと聞いとけば良かったね」
そんな風にタラレバを並べ立てながら、虫の裏側に似ていると言われる精一杯の笑顔を見せて
手を振っている浩史に対して、
一切顔は見ないものの、目には確かに涙が溢れているアスカ。
“動"と"静"で対比にはなっているけれど、大切な人に対する気持ちは同じだという事。
そこに後押しするかのように、アイナさんの主題歌の
「夢で逢えたら 矢継ぎ早に 息を吐くのだろう」という歌詞が重なってからの
あの手紙…まで、流れが完璧としか言いようがありませんでした…。
どうしても印象的なシーンが多く、1つずつ解説してみました…みたいな
感想になってしまいましたが。
それだけ、周りから見たら「ろくでもない」かもしれない立場にいる人々を
視聴者にも共感してもらえるように、
優しく、温かく照らし続けた、作り手のセンスが光った作品だったと思います。
個人的には、世間では「福田ファミリー」の一員として見られがちな賀来賢人さんが、
唇カサカサで無精髭で…という、どこかの街でふらっと見かけそうな
素朴な佇まいを演じ切った事。
山本舞香さんが、唾で生計を立てていたのが精神疾患者になってしまい…という
深夜らしい過激で難しい役どころを体現されていた事。
そして、「平成物語」を始め、「俺スカ」「部活好きじゃなきゃ〜」など、
放送枠&その時間帯に見るであろうターゲット層に合わせた脚本を作り上げる
加藤拓也さんの柔軟性と力量を、また1つ知れた事。
語りきれませんが、それぞれの分野で、今後のドラマ業界の
ポテンシャルを感じさせてくれました。
冬ドラマ最後の作品が、本作で良かったです。
ありがとうございました。
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