アライブ がん専門医のカルテ 11話(最終回) 感想|またいつもの青空の下で

 

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最後まで本作らしさを貫き通した、丁寧で、真摯な作品でした。

 

2人に1人がなる「がん」、そしてその5年生存率は極めて少ないと言われる中で、

乳がんを抱える佐倉(小川紗良)、しかも再発した薫(木村佳乃)のどちらもが

3年後も生き続けられるほど克服出来た…というのは、

フィクションらしく綺麗にまとめた感じは確かにありました。

しかし、それでも本作の世界で生きる人々には皆幸せになってもらいたいと思っていて、

最終回はハッピーエンドがふさわしいとも思っていました。

それは、医療ドラマというジャンルを飛び越えて、人間の心を、

現実を突きつけられた時の繊細な気持ちを、いろんな人々を通して紡いできたから。

 

「病気を抱えた患者」「それを治療する医者」という単なる二者の関係を描くのではなく、

あくまでも「がん」はベースとし、家族を、人生を、自分にとっての生きがいを見つめる

きっかけを与えてくれる作りでした。

 

役者陣はもちろん、通常だったら見せ場になるであろう手術シーンでも

あえて劇伴をかけてサラリと流す事で、静かに流れる"時間"を演出するのも。

辛くて重たい物語ながらも、ほんの温かさ=希望を感じさせる光の照らし方も。

お気に入りな表現は沢山ありましたが、特筆すべきは「多くを語らない」スタンス。

例えば、9話では、民代(高畑淳子)の最期はどうなったかは

扱い方によってはお涙頂戴のエピソードに出来たものを、

本作の中で精一杯生きる人々を見ているだけで、視聴者が自ずと自分の境遇と重ね合わせながら

何かを感じ取れるようにしてくれた作り手の誠意が感じられました。

 

そして、青空がよく見える屋上で心(松下奈緒)が深呼吸をするシーンも印象深いです。

他のドラマなら、特に挿入しなくて何ら支障はないかもしれません。

けれども、本作ではそれが良い意味で「ゆとり」の役割を担っており、

命は儚いけれども、同じ空の下では今でも人生の分岐点を乗り越えようとする人がいて、

新たな一歩を進もうとしている人がいるのだと、

医者や患者からそんな勇気をもらえるような余韻が残りました。

 

無くても支障がないという点では、最初は、前半で描かれていた医療過誤の件は、

患者のエピソードが素晴らしいだけに

わざわざミステリー要素を加えなくても十分成立するんじゃないかという疑問はありました。

しかし、最終回まで見てみると、心と薫だけにある友情はあの事件があってこそ生まれたもので、

あの事件がなければ、お互いが「言いにくい」「聞きにくい」事を

勇気を振り絞って伝えるほどの強固な関係にはならなかったかもしれません。

だから、結果的には、ドラマを作る上では必要不可欠なものになっていたと思います。

(ただ、関河(三浦翔平)の扱いは何とか上手く出来なかったものか…

という考えは変わらないけれども。)

 

ドラマチックに仰々しい台詞や動きを加えず、

登場人物の抱える心境を「行間」を用いて等身大に映し出す作りは、

個人的にはNHKが得意としているイメージがありましたが。

視聴率のためにと忖度しない、奇を衒わない作品を民放でも作れてしまうのだという、

ドラマ…いや、量産され続けて世間では飽きが来つつある医療ドラマの「可能性」を

感じさせてくれました。

 

残念ながら視聴率は振るいませんでしたが、最後まで見続けた視聴者には

1つでも"胸に響く"部分があったんじゃないでしょうか。

ぜひ、DVD/Blu-rayも発売して欲しいです。

そして、もっと日の目を浴びて、賞賛されるべき作品だと思います。

 

 

 

 

 

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