6秒間の軌跡〜花火師・望月星太郎の憂鬱 1話 感想|2人の会話をずっと聞いていたい…
今期のドラマは、突然の死をきっかけに
人生を一からやり直す主人公の姿を描く「ブラッシュアップライフ」や、
事件を絡めながら、幽霊となった恋人の真相を追う「100万回 言えばよかった」、
そして、故人の"生きた証"に向き合う人物と
新しい命に向き合う人物の出会いを描く「星降る夜に」と、
「生と死」が題材となっている作品が多いですね。
本作も、もれなくその1つです。
毎期必ずと言っても良いほど生み出され続けている「刑事モノ」「医療モノ」ならともかく、
1クールでこれだけジャンルが被るのは珍しいです。
まぁ、そこはたまたまだったんでしょうが…
こうして「生と死」が絡んだ作品が近年で何作も出てくるという事は、
大震災から10年以上経って、その時にはもうコロナが猛威を奮っていて、
それだけ、いつまでも生きているとは限らない命の尊さや、死そのものに対して
身近に感じるようになったのが大きいのかもしれません。
時間を戻したくてももう戻せない。会いたくてももう会えない。
どの作品でも、アプローチは違えど、
今でも心の中で"傷"を抱えて生きている人に寄り添いたいという
作り手の想いが覗き見えます。
本作に関しても、現時点ではどんな物語になっていくかはまだ読めませんが、
航(橋爪功)が生前言い残した「すまん…」の真相次第では
心に訴えかけるものになる可能性を秘めています。
上記の作品群と密かに照らし合わせながら(あ…一部は脱落しそうですが(汗))、
その中で唯一30分枠である本作は、結末をどう描いて行くのか?
見守っていきたい気持ちにさせられました。
構成自体も、サクッと気軽に見やすい土曜深夜の時間帯にぴったりでした。
視聴者を引き込ませる"転調"の使い方が秀逸でしたね。
序盤は、まるで本当の親子かのような
台詞の節々から両者の人柄や相手への想いが滲み出る会話劇で惹きつけつつ、
航の死をきっかけに、しばらく立ち直れそうにない星太郎(高橋一生)の"孤独"を
じっくり、シリアスに描いていくのかと思いきや…。
放送開始から中間辺りの段階で、航が幽霊となってひょろっと現れる
シュールなコメディへと切り替えて、飽きさせない作りになっていました。
30分ドラマならではの強みを活かした脚本になっていた気がします。
本田翼さんも、多くを語らない、どこか掴めないような
ミステリアスな役だとしっくり来ますね。
個人的には、台詞よりも雰囲気で魅せた方が光るタイプの女優さんだと思います。
もしかしたら、深夜帯だったので知名度は低いでしょうが、
2017年に放送された「わにとかげぎす」以来のハマり役になりそう…?