silent 3話 感想|感情の蓋を開いた湊斗が切ない…
本作の演出は、ストレートに魅せに行く所から、さり気ない工夫が施されている所まで
こだわり抜いて作られているなぁ…という印象を毎回持つのですが、
その中でも1つ特筆しておきたいのが、本作のタイトル「silent」× 騒音という
相反する2つの要素を組み合わせたタイトルバック。
1話は、ザーザー降りの雨で起こされる紬(川口春奈)のシーンが。
2話は、耳に違和感を覚えるようになった想(目黒蓮)が、
律子(篠原涼子)にずっと耳鳴りがしている事を訴えるシーンが。
そして…今回は、踏切のサイレンが鳴ってから、遮断棒が降り始めるシーンが
タイトルバックとして使われました。
しかし、どれも「うるさい」から連想される音が
使われているのが共通点ではあるんですが、
今回に関してはそれだけではなく、何か"ターニングポイント"の意味も
含まれているんじゃないか…って気がしたんですよね。
踏切だけを映すなら分かるものの、紬の進む道を遮断棒で遮るようなカットだったから。
湊斗(鈴鹿央士)と紬の馴れ初めを描いた冒頭の回想から
前回のラストへとシームレスに繋がっていたのを察するに。
紬と遮断棒を同時に映したカットは、
今まで築き上げてきた紬と湊斗の関係性と、
“青春を共にした同級生"という、輝かしい思い出のまま時が止まっていた3人の関係性が
変わっていってしまうのを示すサインになっていて。
鳴り響く音は、湊斗が今まで蓋をしてきた感情が
どっと溢れ出してしまうのを示すサインになっているのかもしれない。
そんな風に想像してしまった訳です。
なので…切ない気持ちで見ていた1話、2話とは違い、
今回は「何か」が起こりそうな、ザワザワした気持ちで見始める事となりました。
前半は"予感"で済んでいたのが、約32分を過ぎた辺りで一気に"確信"へと変わります。
紬が湊斗を今では「湊斗」と呼び捨てしていると知った事。
「好きじゃない」そうはっきり言われてしまった=その文字を目にしてしまった事。
未練を断ち切るためだと分かっていても、辛いものがありました…。
そして、追い打ちをかけるような「嫉妬してイライラしている方が、
友達の病気を受け入れるよりもずっと楽だった」と告白する湊斗のラストシーン。
傷ついた女主人公を慰めたり、過ちを起こしそうな所を止めてくれたり…
友情は友情でも、そういった女性同士での友情をサブエピソードとして描くドラマを
何作も見てきただけに、男性同士というのはかなり新鮮で
(あっても同性愛のラブコメ…ただの偏見ですが)、
やはり湊斗を、ただの恋愛の添え物的立ち位置にする気はないのだと思い知らされましたね。
昔と今で線引きして割り切ろうとして、前向きな自分を演じ続けた紬。
耳の事で別れを告げた自分をまだ悔しく思っていて、未練が残り続けているであろう想。
紬と想が再会しているのを目の当たりにして、徐々に不安を覗かせていく湊斗。
ここまで3人の様子を見てきた限りだと、きっとこういう人となりなんだろう…
というのは何となく気づけてきて、だからこそ、温度差の違いにやきもきして。
その心境のぶつかり合いが大きな"ズレ"を生んでいく様は、
本当に見ていていたたまれなかったです。
で…今後はちょっと余談を挟んで。
これはほんの興味から後で調べてみた情報なのですが、
名前に「ちゃん」「くん」を付ける手話は一応、
名前の後に左手の人差し指を右の方へ向ける…という形で表せるそうなんです。
それを知った上で見返してみた所、
想の妹・萌(桜田ひより)はその手話を「湊斗+くん」って感じで使っていましたが、
紬はあくまでも現状は「手話を使って話がしたい」を最優先しているからなのか
想と湊斗のどちらも呼び捨ての表現になっていました。
想も、彼女がそこまでは習っていないと分かっていたんでしょうね。
初見の時点でも、動作を見れば何となくのニュアンスで掴めてしまうのが手話なら、
ダイレクトに伝わる分、気を遣わないと聞き手側の解釈が
異なってしまいがちなのが文字だな…と思いながら見ていましたが、
手話事情を知ってからだと、
彼がなぜショックを受けたのか?もより鮮明に見えてきたのが面白かったです。
ドラマの楽しみ方の1つでもありますね。
あんなに明るくてキラキラした人だったのに、想に別れを告げられてからは
自分をすり減らす日々を送っていたのかも…という空白の時間が伺える紬の"あの後"も。
想がわざと知らんぷりして振り返ったら、ワンコのような笑顔を見せてきた湊斗の
2人のやり取りが、今では残酷なものとして帰ってきたのも。
何気なく点けていたお笑い番組が、逆にさみしさを引き立てていたのも。
印象的なシーンは他にもたくさんあるんですが、
全部拾っていったらとっ散らかった感想になりそうなのでね…(苦笑)
それくらい、1秒1秒を見逃したくないと思わせる作品です。