アライブ がん専門医のカルテ 9話 感想|不条理な運命に抗う人々の逞しさに涙…
ああ、ズルいわ…。
XRで夢を叶えさせてあげる伏線回収も、音楽をかけるタイミングも
何もかも出来が良すぎて、文句の付け所がなくて、真に泣かせにかかってきていてズルいわ…。
極め付けは、やっぱり高畑淳子さんの演技の凄み。
どこそこが良かった、印象的だったと感じる所は、
感想として収められる限り1つ1つ書き残していっているのですが、
正直、今回ばかりは、私の拙い文章で高畑さんの演技の凄さを表現するのは
野暮だと思ったくらいでした。
以前にも書いた通り、私の周りにガン患者はいないし、
目の前で誰かの最期を見た経験もないけれど、
末期を迎えた時の表情、話し方、動き方はきっとあんな感じで、
あんな風に旅立って行くのだろうな…と妙に納得させられてしまう迫力がありました。
話題に上がりやすい李社長のインパクトの強さは勿論、
個人的には「となかぞ」での世話焼きなお母さんっぷりも好きでしたが、
また一人忘れられないキャラクターになりそうで…
民代役が高畑さんで良かった、出演されるのが本作で良かったと思わずにはいられません。
冒頭から長くなってしまいましたが、
静(山田真歩)のエピソードも興味深く視聴しました。
妊娠中にがんが再発してしまった彼女。自分の命か、子供の命か、という選択。
最初は、最後の卵子で折角生まれた命だから、その努力は無駄にしたくない気持ちは分かるけれど、
子供の為に自分を犠牲にすれば、子供だけでなく残された旦那もどうなるのか、
後悔の念がますます深くなっていってしまうんじゃないか…という考えを持っていました。
しかし、その考えは民代の言葉、
「ガン患者でも欲しがって良いのよ。やりたい事やって良いのよ!」で全て打ち砕かれます。
…そうだな。他人の私がとやかく言う事ではないなと目を覚ます瞬間。
今回はてっきり静が中心の話になると思い込んでいた分、
前回で前向きに退場してから再び病院に戻って来るショックも含めて
民代の存在感に持ってかれた感じはありましたが。
結果的には、彼女も描写する事でさり気ない
「生まれて来る命」と「去って行く命」の対比にもなっており、
また、自分がどうありたいかは人それぞれ違うものだし、
患者とか関係なく自由に決めて良いのだ…という「価値観の多様性」にも繋がる点で、
2つのエピソードを絡ませたのはしっかり意味があったと感じられたのが良かったです。
それにしても、今回のような回を見ると、元々数字が取りづらい枠とは言え、
視聴率が低いままなのは本当に勿体ないと思えてしまいますねぇ。
本作だけに限って考えるなら、多分、初回のラストのミステリー展開に戸惑って
「思ってたのと違う!」と言って離れてしまった人が多いのかも。私も最初はそうだったし。
でも、回を重ねて行くうちに本作が届けたいメッセージはしっかり伝わったから
ここまで応援して見守る事が出来た訳で。
縦軸の件が解決した前回から患者と向き合うエピソードに絞られて、かなり見やすくなった。
だから、縦軸を無しにしろとは言わないまでも、
もう少し人物の扱い方(特に関河…)、着地点の仕方に工夫が施されていたら
大分違っていたのかもしれませんよね。