リバーサルオーケストラ 7話 感想|初音と三島の雪解け

 

 

最終章に向けての地盤固め…の回ですね。

あ、これ、決して"繋ぎ回"って意味ではなくて、むしろ褒めてます。

主人公のトラウマへの克服に久々に焦点が当たった話になっていた事に満足感もあれば、

本番に向けて着実にステップアップしていく彼女の成長が

個性的な登場人物を絡ませながら丁寧に描写されていて、見応えがありました。

今回は「境遇の対比」「家族の対比」「"連続ドラマ"ならではの積み重ね」

活きた話だったと思います。

 

それぞれ具体的に書くと…まず1つ目は「境遇の対比」について。

今回は何かと「10年ぶりに音楽の道に戻ってきたけど、本業は公務員である初音」

強調されていた印象を受けました。

言い方は悪いですが、初音(門脇麦)にはいつでも"逃げ道"が用意されている状態…。

そこを突くかのように、「プロとして長年努力し、地位を築いてきた立場」である

穂苅(平田満)や三島(永山絢斗)のエピソードを盛り込む事で、

彼女が音楽1本で生きていくのか、公務員に戻るのかで中途半端な状態なのを

浮き上がらせていくのです。

 

「みんなに助けてもらいながら、楽しくやってます」

「(今後について聞かれて)まだどうなるか…」「なんとか頑張ってる」

そんな初音の言葉が気に入らなくていちいち突っかかる三島の態度も、

彼女がいなくなってからもなお比較され続け、

認めて欲しい人に自分を認めてもらえない苦しみを想像させて

切ない気持ちで見てしまっていましたが、

穂苅の世代交代のエピソードに関しては、しみじみ考えさせられるものでした。

 

穂苅の場合は、課題曲である「運命」でソロパートを任されていたのですが、

あまり成果を上げられなかった結果、第二奏者の若い女性とパートを交代する事になるのです。

あの意味深なシーンを踏まえるに…きっと、妻の介護で練習時間が制限されている

生活を続けていたのでしょう。

でも、本人は朝陽(田中圭)の指示に対して、

「時間があればもっとやれたはずなのに」「まだ第一線で活躍する体力は残ってるのに」と

不満を漏らしているかと言ったらそうではなく、現実を案外すんなりと受け入れます。

これが意外だった…とともに、自身が背負う"運命"に抗おうとしなかったのも

音楽に真剣に向き合い続けて悔いが残っていないからで、

まだ10年前の出来事がトラウマになっていて、本領発揮していない初音からしたら、

この思い切った決断は出来ないんだろうな…とも思わされました。

プロとアマチュアの、音楽に対する"覚悟"の差。

彼女の成長のためには、外せないエピソードだったと思います。

 

早速脱線しかけていますが(苦笑)2つ目は、「家族の対比」について。

メインとなっているトラウマの克服を描く中の唯一の"癒し"パートとして、

初音を支える両親の様子も描かれました。

SNSで誹謗中傷を受けているのが気がかりで、遠くからはるばると…

あとは、初音が暗い表情を浮かべるたびに心配したり、肉団子を振る舞ったり、

初音が帰宅した時にすぐ母が駆け寄ってきたりで、

何かと気にかけてくれる両親を見て思い出すのは、

三島の父・光太郎(加藤雅也)と三島の関係性。

光太郎の口から出るのは初音初音ばっかりで、

息子を評価する話題が出た事はほとんどありません。

三島があれだけ拗らせているのも無理はなく、

親の接し方が、初音と三島の人格を形成していっているのだ…と思わされました。

 

そして、3つ目は「"連続ドラマ"ならではの積み重ね」について。

ざっくり言うなら、前々回と前回あっての今回…ですね。

「天才さまのお気持ちは私らには分かんない」

この言葉自体はかなり辛辣ですが、

天才にはなれなかった苦い想いをした玲緒(瀧内久美)が言うと、重みが大分違います。

珍しく感情的になって説得した朝陽もそうで、

人の部屋に勝手に入り込んでくる事自体は割とヤバいですが(笑)

でも、それも厭わないほど本音を直接伝えたくなったのも、

自分には出来なかった3人の団員の再起を手伝ってくれて、

自分もその1人だったから、才能がここで折れては欲しくない…という

気持ちが働いたからなんですよね。

 

今期は回によって人物描写や内容に

ブレを感じる作品もあるからか(それは複数脚本なのもありますが…)、

キャラ設定や今までのエピソードを大切に、慎重に扱い、

しっかり"結果"へと結びつけている本作には、本当に感心させられます…。

「安心して見られる作品」って、中々貴重だと思います。

本宮(津田健次郎)の嫌がらせについては、確かに露骨にはなっているものの、

主軸である「オーケストラの立て直し」がおざなりになっていないので

個人的にはそこまで気になりません。

 

強いて言うなら、三島のキャラ変にはちょっと驚いて、

もう少し"過程"があっても良かったのかな…と。

ただ、冒頭で、幼少期の初音に褒められて思わず笑顔になった事や、

子供の頃の写真を今でもバイオリンケースに入れていた事など、

彼がどんな想いでここまでやってきたのかが窺える要素はあった上に、

初音のあの演奏を聴いたら、見直すのも無理はなかったんじゃないでしょうか。

素人の私が聴いても、第一音から艶を感じさせましたからねぇ…。

彼女の微笑む姿も初めて見られて、ラストの伸びやかな音色も含めて、

最終章前に相応しい回だったと思います。

 

 

 

 

 

 

 

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