嘘解きレトリック 11話(最終回) 感想|2人の日常をまたいつか見たい…
ドラマの中でクリスマスツリーが飾られていると、秋ドラマの終わりを実感するし、
これが最終回でもおかしくないと前回を見た時には思っていましたが、
なるほど…総括と呼ぶにふさわしい内容に仕上がっていましたね。
名前も自分自身の事も、全て嘘をついている麗子(加藤小夏)。
素性を隠したいのか?なぜそこまで嘘で塗り固めようとするのかは、
親友であり姉妹のようでもあり、特別な感情も抱いている存在の鈴乃が
婚約相手と結婚する事が関係していました。
あの時は喜んだけれども、本当はもう一緒にいられなくなるのが寂しくて、
大切な人の幸せを願えない自分が心底嫌になって、
こんな醜い自分を相手にも見せたくないし、心にもない嘘もつきたくないと思ったそう。
「何もかも思い通りになるなら、誰も嘘をつかない。
思い通りにならないものを思い通りにしようとした時、嘘をつくんです。」
左右馬(鈴鹿央士)のこの言葉にはハッとさせられましたね。
九十九夜町で彼と出会うまで、嘘と本当を聞き分ける能力を持っている自分に対して
これまで様々な事件や出来事を通して、悪い嘘だけじゃなく、
優しい嘘、好意からくる嘘…いろんな嘘がある事を知った訳ですが、
嘘をつく人の根本には「こうありたい」という、
理想に少しでも近づきたい想いが含まれているのだと。
走馬灯のような回想を見ながら、確かに…と、胸にストンと落ちる感覚を覚える結末でした。
「レトロ・ミステリー」とうたっている本作ですが、
個人的には、食べ物や小物、街の雰囲気から、季節の移ろいを感じさせてくれる所が好きで、
毎回惹かれながら見ておりました。
秋刀魚に栗ご飯、寒い時期に食べるあつあつのつくも焼、肉団子いっぱいのお鍋、おでん…
本作の中で出てくる料理、み〜んな美味しそうで。
「今日は〇〇♪」とウキウキしながら歩く左右馬の姿も、秋〜冬の季節の到来を感じさせて
見ている私も一緒に心が弾んでいたんですよね。
水面にゆらゆら映る月も、初雪もロマンチック。
昭和初期を舞台にした作品だけあって、古き良き日本の風景を尊重し、
大切に扱ったのが伺える画作りにも時折うっとりさせられていました。
味わい深さを醸し出していましたが、
若手俳優のキャスティングも、世間には広く知られていないんだろうけど
自然と目を引く方ばかりで、ここもセンスの良さを感じさせました。
西片くん(←分かる人には分かる)が登場してきた時には、声が出ちゃいましたよ。
半年くらいしか経っていなくても、やっぱり声変わりってするもんなんですねぇ。
徳田史郎は…今後も出番がありそう。絶対、1話限りじゃないでしょう。
視聴前は、脚本家陣と演出家陣のネームバリューのバランスが偏っている事から、
「脚本=物語の設計図」だと考えている私からしたら
大丈夫なのか…?と不安で仕方なかったですが、
いざ最終回まで見てみれば、ベテランの演出家と(恐らく)フレッシュな脚本家の
相互作用がきっちり働いた作品になっていた気がします。
何しろ凄かったのは、複数体制で、しかもそれぞれ作風や得意分野の違う
演出家を起用していれば、回によって雰囲気やキャラ設定が
ばらついてしまう可能性だってなくもないのに、
演出家ごとの良さを活かしつつも、物語の軸は「"嘘"が引き起こす葛藤・苦悩」
「相手を信じたいという気持ち」の人情劇テイストで一貫していた所。
お陰で、1話ごとに違った面を見せる内容に、冒険のようにワクワクしつつ、
そこでの経験を通して左右馬と鹿乃子の絆が深まっていく様を微笑ましく見られました。
鹿乃子の成長物語としても、ブレがありませんでした。
ラストで、「くら田」家族の撮影のはずが、徐々に町の人たちが参加してきて
賑わっていくシーンを見て、この町の登場人物は個性豊かで魅力的だったなぁ…としみじみ。
6話の猫を追いかけるくだりもそうでしたが、1つの画面に人が密集する所が
いかにも下町らしくて、そこも好きなポイントだったんですよね。
左右馬を意識し始めるも、まだ迷いがある状態の鹿乃子で終わり…
ぜひまた、続編でも、土曜プレミアムで放送されるSPドラマでも良いので、
続きの話が見たいです。
肌寒い季節に人の温もりを感じさせる作りだったので、
秋冬にぴったりな作品ではあったんですけど、
これはベタな例えですけど…桜の木の下でお団子を食べながらお花見をする2人も、
線香花火をして楽しむ2人も見てみたいなぁとも思ったり。
いや、放送時期はいつだって嬉しいです。
原作は完結しているそうですが、まだ話が残っているとの事なので…
ゆっくり、ゆっくりお待ちしております。
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