罠の戦争 6話 感想|権力を行使する者たち
放送も終わりに差し掛かっている頃の、開始から48分辺りで
亨(草彅剛)が可南子(井川遥)にこう話すシーン…
「衆議院議員の名刺1枚で救われる人もいる。
総理の名前を出しただけで、党の総務局も態度を変える。権力…ってやつか。」
今回の内容は彼のこの台詞に集約されていて、
名前を出したり、顔を見せたりしながら
「権力を行使する者」が多方面で描かれた回だったと思います。
具体的に例を挙げるとするならば、こんな感じ。
・(話しぶりからして)大手の週刊誌でも、幹事長・鶴巻(岸部一徳)の記事は
クビを恐れて避ける
・ナイフで脅迫してきた男性が、鴨井(片平なぎさ)の「厚生労働大臣」という
ワードを耳にした途端、怯んだ態度をとるようになる
・融資先を見つける手助けをして欲しいと頼む工務店員に対して、
亨が名刺を渡しながら「私の名前を出せば話を聞いてくれると思う」とアシストする
・鶴巻の顔を見ただけで早急に車を通過させる検問
・総理・竜崎(高橋克典)の名前を出した途端、亨の要求に素直に従い始める総務局部長
「権力」と聞くと、まずは誰も逆らえなかったり、平然とした顔で揉み消し行為をしたりする
黒幕が思い浮かんで、悍ましいイメージがつきがちです。
ただ、本作の場合は…そんな意味合いだけでなく、
1人の力だけではどうにもならない相手に対してそっと支えてくれるような
“1つの手段"としても描かれるのです。
良い事にも悪い事にも権力は使われていて、そうやって世の中は上手く回っている。
ラストに向けてのこの"前フリ"が巧みに作られているなぁ…と思わされました。
鴨井の裏切りに関しても、回を重ねるごとに
ターゲットとなる人物が退場するか、亨の味方につくかしながら
登場人物がどんどん絞られていっているので、
正直、それだったら彼女もきっと…とは読めはしたんですが。
今回の構成と今までの内容…Wの意味で、
ちゃんとショッキングな展開に見せているんですね。
前者だったら、上の例にも書いた通り、
前半では鴨井も困っている人々を助ける様子があって、
彼女の活躍ぶりに惹かれた可南子が「私も力が欲しい」と亨に決意表明する流れで
彼女を"スーパーヒロイン"と印象づけてからの、直後のどんでん返しですし。
後者だったら、亨がよく発する「弱き者」に因んで、
まだまだ男社会である政治界を生きる女性議員の奮闘が、
物語を進める上でのもう1つの軸になっていて。
初回のセクハラ、前回の演説、そして今回の子供シェルターなど…
様々な活動を通して名誉を残す鴨井の姿が描かれていったのです。
そう考えると、「権力を振りかざす者に、自身も権力を使って政治界に変化をもたらす」点では
亨と鴨井は共通していますね。
まぁつまり、何が言いたいかっていうと(苦笑)
1話単体だけでも、ジェットコースター(頂上までゆっくり登って、一気に落とされる感じ)
のような展開で最後まで目が離せなければ。
“連続ドラマ"として見ていても、鴨井が実質
亨たちにとっての中心的な人物にもなっていたのを踏まえると、
今後、政治界での立ち位置や関係性が大きく揺らぎそうな予感がして
ゾクゾクさせられるという事。
それも残り4話だと想定すると、まだ隠し球が用意されている気がしてなりません。
ドラマは基本的には、9〜11話で1つの物語になっているんですけど、
他の作品を見ていると、1話ごとの完成度も大切だな…と改めて思っていて。
今回は、そのどちらの面でも十分に精巧な出来だったのではないでしょうか。
いや〜…つべこべ言ったものの、シンプルに面白かったです。
何となく分かっているのに、
主人公と同じ「騙された!」って感覚に陥らせるの、中々凄いと思います。