silent 5話 感想|2人の思い出だった"ぽわぽわ"

 

 

「うれしかった」

今回、一番涙腺に訴えかけてくる言葉はこれでした…。

ああ、良かったなぁ…想(目黒蓮)。そんな風に思ってくれてた(くれた)んだなぁって。

 

前回のフットサルシーン、良い感じの雰囲気ではあったものの、

本人は心から楽しめているのだろうかと

ずっとそわそわしながら見ていたんですよね。正直。

デフサッカーも考えていて、それでもその道も諦めてしまった想が

(「買った」という言及がされなかった辺り)まだ当時の運動着を持っていたんだから、

きっと、心のどこかでまた"前みたいな"サッカーがしたい…と思っていた部分はあったにせよ。

でも、交友関係をぱったり切った状態で3年ぶりに会うとなると、

自分のせいで上手くチームが回らないんじゃないか…

誰かとぶつかって怪我させてしまうんじゃないか…という不安は付き物な気がするんです。

実際見ていても、相手のペースで誘導されたり、集団に紛れ込んだりしている時に、

何が何だか分からず困惑しているような表情を見せていましたからね。

 

今回は贅沢に、紬(川口春奈)と湊斗(鈴鹿央士)がお互い前を向くまでの経緯に

1時間まるまる割いてきた訳ですが。

同時に、「2人が別れたのは自分のせい」「納得行かない」とモヤモヤしていた想が、

古賀(山崎樹範)との関わりによって、1人でゆっくり考え直して、

この再会にも意味があるのだと受け入れるまでの時間でもあったのかな…

と思える内容になっていました。

 

従来の恋愛モノだったら、一度別れて元恋人の関係になってからのエピソードって

あまり重点的に描かれないイメージがある分、

紬と湊斗にまつわるエピソードを存分に詰め込む構成だったのも、何だか新鮮でしたね。

男同志の友情をガッツリ絡めてきたり、

「話すならLINEで良い」と思っていた想が、紬に対して「顔見て話したい」と

直接会って伝えるようになった根底に、親友の湊斗の存在がいると分からせたり…

本作って、王道のラブストーリーに見せておいて、その定型を徐々に崩しに行っている

作品でもある気がするんです。

 

2人とも一緒にいて"ぽわぽわ"を実感していて、

当時の思い出をあれだけ大事にしてくれているんだったら、

別に別れなくても…と思う気持ちもなくはないです。

でも、それって、8年間の2人を隅々まで知らない

三者の立場だからこその考えなんですよね…結局は。

好きな関係性だったから別れないで欲しかった…という気持ちと相反して、

今別れるのが2人のためで、これ以上湊斗の優しさを傷つけないためにも

必然だったのかもしれない…という気持ちも同居しているというか。

想との付き合いが"恋"なら、湊斗との付き合いは"愛"で、

恋愛ならではのときめきは特になかったのかもしれないけど、

幸せで溢れていて、かけがえのない時間で、「好き」なのは間違いなかったよ…と

伝えてくれているかのような紬のあの電話での告白は実に誠実で、

ピリオドを打つには相応しい、

2人の決意にも納得出来る落とし込みになっていたのも良かったです。

 

で…これはちょっとした情報なのですが、

朝ごはんを食べながら紬が止めた曲は、スピッツの「みなと」という曲でした。

その曲の一部には、こんな歌詞があります。

「船に乗るわけじゃなく だけど僕は港にいる」

「君ともう一度会うために作った歌さ 今日も歌う 錆びた港で」

元々は、お互いが別々の道を歩み、最初は振り切ったつもりでいたものの、

どうしても大切な人との日常ばかり求めてしまう…という

未練を歌った曲だと捉えていたんですが、それがもう…湊斗の心境と重なるんですよね。

港で例えるとするなら、彼はいつだって紬と想の"見送り人"だった。

高校時代では紬を後押しするし、手話教室も勧めるし、

そして、2人が手話で楽しそうに話しているのを見て、勝手に別れを切り出しちゃうし。

大切な人を優先して、自分の事は後回しにしがちな性格だった。

だから今回も、紬と想が再び両想いになれるよう"受け渡し"をして、

船へと乗って旅立っていく2人を、見えなくなるまで見届けた…そんな風に思えました。

後者の歌詞は、紬と培った思い出を彼女もずっと忘れないでいて欲しいと願う他に、

同じベッドで目を向かい合わせながら寝ていた紬とのやり取りが

しばらく幻影となって引きずりそうな"湊斗の今後"とも重なりますしね。

 

今回の内容のためにこの曲を用意して、

湊斗という名前はこの曲が由来だったんじゃないかって。

本作だけでなく、もちろんどの作品も

1つ1つこだわりを持って作られているのは理解していますけど、

制作者側の意図がはっきりしているのが伺えると、

やっぱり、物語や登場人物の奥行きも広がってくるものですよね。

 

想が好きな髪型だと教えてもらったポニーテールをやってみたものの、

結局戻してしまった紬の一連の流れも、

やってみたからと言って、もう気軽に報告出来るような関係ではなくなったんだよな…という

友達同士の関係に戻ろうと頑張っている彼女の考えが覗き見えたようで、印象的でした。

 

とにかく、爽やかな余韻の残る、丁寧な"第1章の締め"回だったと思います。

次回からは第2章に突入ですね。

今回はあえて奈々(夏帆)の出番をなくしたのも、

想と再び付き合い始めてから襲ってくる現実っぽさを感じさせます。

正輝(風間俊介)の件も、光(板垣李光人)の件も、

律子(篠原涼子)の件も、萌(桜田ひより)の件も…

そしてようやく登場した想の姉・華(石川恋)の件も、まだまだ山積み。

それぞれの登場人物が2人の新たな恋にどう絡んでくるのか、楽しみです。

 

 

 

 

 

 

 

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