新宿野戦病院 7話 感想|「かわいそう」「大変ね」の裏に隠された繋がり
主題歌のいつものイントロが聞こえてきた途端、
おお、もう終わったのか!と思ってしまった今回。
思いがけず良いお話でした。
ラストはほぼ毎回、次が気になるような終わり方をするだけに、
子供らしい純粋さが滲み出る、前歯のない少年の笑顔のサムズアップにつられて
周りも安堵から同じポーズをとる…という優しさに溢れた空気感に
しみじみと見入ってしまってました。
今回深く掘り下げられた人物は、堀井(塚地武雅)とその母・育江(藤田弓子)親子、
アパートで亡くなった独居老人・田辺の3人。
堀井の境遇は、親には中々理解してもらえないという意味で。
育江と田辺…いわゆる「高齢者」は、認知症や介護問題は中々避けられないのはもちろん、
ニュースではマンションやアパートでの孤独死や、
アクセルとブレーキの踏み間違いで自動車事故を起こしやすい年代として取り上げられやすい
という意味で、世間的には「かわいそう」「大変ね」といった気の毒なレッテルを貼られがち。
しかし、3人の人生はそう辛く悲しい事ばかりでもなかったのです。
田辺の場合、1週間前にアパートを訪ねていた娘は
「孤独死なんて、情けない」と嘆いていたけれども、
実際は聖まごころ病院の常連さんとの付き合いが多く、ベッドにたくさんのお供物が渡され、
彼はいつも充実した日々が送れていたんだろう…というのが察せられる
エピソードに仕上がっていました。
そして堀井に関しては、自身が幼い頃から感じていた違和感を理解してくれた母親がいながらも、
親の望んだ"男らしい"人間にはなれなかった、期待を裏切る事になってしまった
後悔や罪悪感からお父さんを演じていた部分もあったのかもしれませんが、
寝ている母におやすみと言った時の微笑みの表情が何だか忘れられなくて。
男とか女とか関係なく、子供から母親への純粋な思いやりが感じ取れて、
ちょっとほっこりした気持ちにさせられたのかもしれません。
20代で若くして家を出て行った分、あと何年一緒にいられるかも分からないからこそ、
せめて母の好きな亭主関白の父になりきって、
悔いのないように少しでも母を幸せにしてあげたい…
それは立派な親孝行で、仮に演じていると知っていても、本当に知らなかったとしても、
育江は我が子の愛情が嬉しかったんじゃないかと思います。
…親子の時間が育めたから、認知症を受け入れるという現実にも向き合えた訳ですしね。
あと、これはあくまでも想像の域ですが、
堀井がお父さんを演じてもなお「ペヤング」というワードを口にしていたという事は、
もしかしたら、父もペヤングが好きでよく食べていたんじゃないかな?とも。
父に影響されて食べるようになったのか、
親子で好きなものが同じだったのかもまた分かりませんが…
気持ちが離れ離れのままだったとしても、父と子を唯一繋ぎ止めてくれたのが
ペヤングだったら良いな…と思ってしまいました。
高齢者問題とジェンダー、普段なら交わらないであろう2つのエピソードから見えてくるのは、
自分たちが"その人"を知らないだけで、
目に見えない所で優しい繋がりはあるかもしれない…というもの。
性別ではなく、ただ優秀な看護師が欲しいと言って採用してくれた
啓介(柄本明)も頼もしく映りました。
個人的には、5話に並んで…いや、5話以上に?好きな回になりそうです。