家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった 1話 感想|可哀想なのか、普通なのか。

 

 

※2024/7/9に再放送された回を視聴。

去年BSプレミアムで放送されていて、評判が良さそうだったので

いつか総合でも見られたら良いな〜…と楽しみにしていた本作。

事前情報を入れていたのは、「ふてほど」より前に錦戸亮さんと河合優実さんが

共演されていた事くらいで、あとはどんな話になるのかも何も知らない状態で視聴しました。

 

だからか、家族を描きながらもちょっとシリアス寄りというか、

どこか切なさを感じさせる作品なのかと想像していた私からしたら、

登場人物もやりとりも劇伴も地味にシュールな作りだったのにはびっくりしちゃって(笑)

でも、終盤になって話が一気に深刻な方向になって、シュールだけではない事が判明。

ここからは闘病モノ?と思っていたら…

ラストに七実河合優実)からこんなモノローグが発せられたのです。

 

「家族の死 障害 不治の病…どれか一つでもあれば、どこぞの映画監督が泣かせてくれそうなもの。」

「それ全部、うちの家に起きてますけど?」

これ、痺れましたねぇ。達観した様子で淡々と語るのがまたグッと来たんですよ。

と同時に…劇中で度々入り乱れる形で挿入されていた回想が何を意味するのか、

パズルのピースがカチッとはまるかのように理解出来ました。

 

車椅子になった母、既に他界した父、ダウン症の弟。

周りからは可哀想だと思われる事でも、七実にとっては"普通"なんですよね。あくまでも。

人生を長く生きていると、全ての不幸が自分に降りかかっているんじゃないかと思うくらい

ツイていない時期がある。

けど…どんなに不幸な日々を送っていても全部が不幸という訳ではなく、

嬉しい時、楽しい時だって訪れるし、

逆に、心から嬉しい楽しいと感じられるのは

それまでの積み重なった不幸や苦悩を経験しているからで、

その苦い思い出はいつまでも忘れないでしょう。

 

岸本家だって同じで、例えば、出産した我が子がダウン症だと診断された時は

かなりショックだったでしょうけど、

通学班のメンバーと打ち解けられたり、お風呂のアヒルのおもちゃを掃除してくれたり、

1人でバスに乗って帰宅出来たり、現在(2014)ではおつかいで注文通りのものが買えたり…

「ママが無理だと思う事」は何でもやり遂げて、そのたび、ママを喜ばせてくれた。

人生は苦しい事ばかりではないし、決して幸せな事ばかりでもない。

回想の挿入の仕方には、この意図が含まれているんじゃないかな?という気がしました。

 

本作だけでなく、他のNHKドラマや朝ドラを見て思うのは…

重い題材を扱いながらも「お涙頂戴」として安く消費される事がないように、

かと言って、悲劇の要素を排除し過ぎて軽い仕上がりにならないように

細心の注意を払いながら作られているんですよね。

あまり比較はしたくないですし、他局にも良いドラマはありますが、

そこが、NHKドラマが一定数評価されている理由かなぁと思います。

本作の場合だったら、彼女の弟が障がい持ちだったと知ってから

露骨に態度を変えるのではなく、むしろ、真剣に付き合っているからこそ

弟の面倒を見る自信がない…として、

彼氏・旭(島村龍乃介)が誠実な人に映るように描かれていたり。

車椅子生活を余儀なくされ、涙を流していた母・ひとみ(坂井真紀)が

数年後、次の場面に切り替わった時には一転、

自ら車椅子を軽快に動かす様子が見られたり。

とにかく、日常で起こる"普通"の事は"普通"に描き、安易に感動を誘ったりはしない…

そんな作品にするという作り手の意思が伝わってくる初回になっていたと思います。

 

何となくカッコつけた書き方になってしまいましたが(笑)

単純に、岸本家の人生を覗き見してみたい…そう興味を湧かせてくれました。

主演の河合優実さんは先ほども書いた「不適切にもほどがある!」で認知しましたが、

河合さんの演技は、役を演じているのではなく、ただそこにいる人のように見えるんですよね。

まだ初回ではありますが、評判が良かったのも頷けます。次回も楽しみです。

 

※本放送は2023/5/14〜7/16。

当ブログでは、地上波・BS・CS・配信関係なく、世に初公開された日を基準にしているので、

本作の感想は「2023年夏ドラマ」のカテゴリーに入れさせていただきます。

 

 

 

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