さよならマエストロ〜父と私のアパッシオナート〜 1話 感想|これは期待しても良い…かも?
ドラマを日頃から積極的に見ているタイプじゃなければ、余計な事もチラつかず
本作を純粋に楽しめたのかもしれませんが…
やっぱり、数年間ドラマを毎日何本も見続けている私からしたら、
どうしてもいろんな作品が頭に過ってしまうものなんですよねぇ。
例えば、何の作品に似てる?と聞かれて
一番思い浮かべるのは でしょう。
廃団寸前の地方オーケストラ、その存続を良しとしない市長の存在、
ヒロインは市役所勤務で元楽器演奏者(過去に何らかのトラウマがあり引退)と
設定もかなり類似しています。
楽団の立て直しを扱っているなら、ある程度方向性が定まってしまうのは仕方ないとは言え、
ちょうど1年後になぜまた同じような作品を放送したのか…という疑問もあるんですけど。
他にも、元々乗り気でなかった主人公が、物事に関わっていくうちに当時の記憶が蘇り、
最終的に一歩踏み出す事を決意するまでの流れは前期の「下剋上球児」でも描かれていたし…
風変わりなカフェは、脚本家の過去作品である「妻、小学生になる。」にもあったし…で、
総じて、つい最近見たと言いたくなるような要素ばかりだったのには
勿体なさを感じてしまっていたんですよね。
しかし、途中までは他の作品に似ている事に気を取られながら見ていたのが、
ある時から「お?もしかしたら…」と思い始めてきました。
そう思えた理由が、放送開始から約50分後の俊平(西島秀俊)と古谷(玉山鉄二)、
俊平と内村(久間田琳加)の2組のやり取りにありました。
どんなやり取りだったのかをもう少し詳しく書くと…
3月いっぱいで晴見フィルハーモニーが廃団になる知らせを受け、
古谷は俊平に、仕事でいろいろあってもみんなと音を奏でると気持ちが落ち着く事、
自分にとってはホームである事を語り、
一方で内村は、立ち寄ってきてくれた俊平に対して
高校の演奏会の時のトラウマを吐露し始めるのですが、
脇役のエピソードの主人公との絡め方が絶妙だったんですね。
この手の群像劇も取り入れた作品は、通常であれば
ある程度役者さんを揃えていて登場人物が多いが故に、
それぞれキャラを立たせたり、見せ場を作ろうとしたりして個々のエピソードを膨らませがち。
その結果、話に充実感は覚えるけれども、
同時に散漫としていて、主人公の存在が霞みやすい。
ですが、本作はそういった群像劇ならではのデメリットを上手く回避していて、
あくまでも脇役のエピソードはさらっと、主人公の次の行動に繋げるように盛り込む事で、
(例えば…・古谷の場合→誰もいないホールに訪れてたくさん書き込まれたホワイトボードを見ては、一生懸命取り組んできた団員たちの顔を思い浮かべて微笑む。
・内村の場合→彼女の解釈が面白い!と感じ、有名曲の「運命」にまだ新しい発見があったのかと感動してから、音楽について語る口が止まらなくなる。
…さっきから説明臭くなっちゃいましたが(汗))
本作の主軸は「オーケストラの立て直し」ではなく、
「オーケストラを通しての父と娘の再生」であるのだと強調した作りになっていました。
まぁ、まだ正体不明の謎キャラ2人の登場や
古谷の秘密がまさか…な終盤のシーンが用意されている辺り、
今後どう転ぶかは未知数ではありますし、若干の不安もあります。
でも個人的には、脇役のエピソードの処理の仕方だけで、
軸のブレない作品になりそう…という期待の持てる初回となりました。
そして、もう1つ優れていたのは、いつものごとく25分拡大だったにもかかわらず、
無駄な描写や引き延ばしがほとんど見当たらなかった所です。
言い換えるなら、25分拡大の初回放送用にきちんと練り上げられた脚本だなぁと思いました。
いや別に、他の脚本家が全くそれを考慮していないと言いたい訳じゃないのですが…
拡大版にするのが通常運転の他のドラマの初回をいくつか見ていると、
放送尺を増やした分、その部分を重点的に描写すれば良いのになんで疎かにするんだろうとか、
1時間で収まる話を引き延ばしているのが見え見えだとか
そういった微妙な仕上がりの作品が多かったので、
あまり拡大版の初回で満足出来た試しがなかったんですよね。
でも…本作の内容は理路整然としていると言いますか。
何気ない、余分だと思われがちな家庭パートも、後半でしっかり意味を持たせているんです。
特に、家事が全く出来ずパンケーキを何度も真っ黒焦げにしていた俊平が、
団員との関わりがあり、息子・海(大西利空)の「2人で止まっててどうすんの?」
という言葉に強く背中を押されたのを機に、
パッケージに書かれた説明とにらめっこしながら作ってみたら
初めて綺麗に焼けた一連の流れなんかは、
娘と向き合う事を避け続け、音楽の道を閉ざした父の状況と、
そんな父でも再スタートを切ろうと思えばいつだってやり直せるのだという
ほんの希望を想像させて、自然と涙が溢れてしまいました。
パンケーキが綺麗に焼けた事で、オファーを引き受ける意思を固め、
まだ終わりだと決めつけたらダメだと痛感した俊平が
諦めモードの団員たちに「終わりが決まったオーケストラでも出来る事はあります。」
「僕は信じてるんです。音楽は…人の心を救う事が出来ると。」と励ます。
…ここも、「〇〇があったから〇〇がある」みたいに、彼が少し頼もしく映ったのにも
説得力を感じさせる展開でした。
これは個人の好みの話になっちゃうんですが、
シリアスもハートフルも卒なくこなす演技面だけでなく、
バラエティのご出演時で、変にカッコつけずにお茶目な姿を見せて下さる
俊平という役が西島さんで良かったなぁとも思います。
本来の自然体さがね…勇気を出して再び指揮者になる
主人公の心境とリンクしている気がするんですよ。
指揮をとっている時の心から楽しそうな表情を見ると、本当、応援したくなるんです(笑)
あとは、響が父を頑なに拒絶している理由が見えてこないので、
なるべく早い段階で明かしてくれる事を祈るばかりですね。
最初はいろんな作品が重なれど、
回を重ねるごとに本作にしかない良さが味わえる作品になりますように。
…日曜劇場、今度こそ当たりかな??