競争の番人 1話 感想|権力が弱いって所がピンと来ない。
うーん…………やっぱりこの手の「世間的には珍しい職業を扱うお仕事ドラマ」を
満足度高い作品に仕上げるのって難しいのだと、改めて思わされますね。
フィクションを強めると嘘臭くなってしまうし、
リアルに寄せようとすると味気なさが残ってしまう。ここの匙加減、大事…。
白熊(杏)のミスも、小勝負(坂口健太郎)の物事を見通す力の高さも、
仕事を通して紹介する事で"説明臭さ"を和らげているし。
チームに衝突する立場の人物がいないからか、雰囲気の良さを感じさせて、
そこがストレスフリーに繋がっていて見やすい。
そして、専門用語の1つ「カルテル」の図解も分かりやすい。
でも、どことなく「面白い!」までには至らない。
初回を見ていて思ったのは…
「で、結局、公正取引委員会ってどんな仕事なの?」って所なんですよね。
無知ながら、私がイメージしている公正取引委員会は、
独占禁止法に基づいて、劇中にもあった数十人での立ち入り調査だって何度も行う形で
企業の不正を取り締まっていく、言わば"人数と力"で圧倒していくといった感じ。
過去にも実際に、某大手芸能事務所の放映権について指摘したケースがあったから、
大小関係なく、忖度なしで是非を決める強い組織なんだろう…と捉えていました。
だからこそ、立ち入り調査を決行しても
一般職員にまで舐められている描写になっているのがピンと来ない。
もっと言えば、「警察よりも権力が弱い」所がピンと来ないんです。
そこで思うのは、公取“内"での仕事描写にこだわらず、
視聴者が想像つきやすく、ドラマの題材でよく扱われやすい警察や検察との対比を
もう少し強めるなどして、警察や検察に出来ても自分たちには出来ない苦しさ、不条理さを
話に織り交ぜても良かったのかなぁと。
何と言うか…"全体の中の個"が見えてこない。そう言った方が近いでしょうかね。
そして、「で、結局、公正取引委員会ってどんな仕事なの?」と書いた理由は
物語の紡ぎ方にもあります。
良く言えば、公取の持つ小難しさを感じさせないような工夫とも例えられるでしょうが、
逆に言えば、既存のドラマのパーツの寄せ集め…みたいな。
凸凹コンビモノでもあり、刑事モノでもあり、
ミステリー要素もあり、月9らしい恋愛要素も匂わせる。
約1時間半内でいろんなジャンルのエピソードを盛り込んでくるから、
本作でしか感じられない魅力がなくて、決め手に欠けると言いますか。
その根本的な原因は…原作者側と作り手側の
「こうありたい」意思のズレから来ているんじゃないかとも思ってます。
内容を見てみて、どこかテイストの噛み合わなさを覚えたのは気のせいですかね?
原作がどんな作風なのかは分かりませんが…
想定するとするなら、「弱くても戦わないといけない」という台詞があったように、
元々、弱者が強敵に立ち向かって這い上がる物語がベースだったはずが、
作り手側はもっと馴染みやすいようにと、あらゆるエピソードをゆるめにして
ライトで若干コミカルな仕上がりに変えてしまった気もするのです。
まぁ、逆も然りですが…。
日曜劇場の池井戸作品に携わられていた脚本家もいらっしゃるのでね(苦笑)
何にせよ、ライトに見せたいのか、真面目に見せたいのか、
この作風のブレは早めに軌道修正していただきたい…というのが本心です。
杏さん演じる白熊の空回り具合が、足を引っ張って物語のテンポの悪さを
加速させているのも、スカッと解決をうたうには大ダメージのような。
私がこの手の役でよくツッコむ「新人の役者さんでも支障なさそう…」以前に、
マイペースな小勝負を中心に据えて、彼女はそんな彼に振り回される個性的なメンバーの1人…
という立場に置いてみた方がしっくり来たかと思います。(これは後の祭りですが…。)
白熊に関する描写が抑えられていれば、展開のもたつきも減って
1話内で完結出来たのかもしれませんね。
同じ原作者作品でも、前作よりはるかに"ドラマ"としては消化出来ているのに、
なんか、全体的に勿体ないなぁ…と。
来週からは月10枠で新ドラマが始まるので、そちらが初回から掴まれる内容で
本作の方が2話でも面白くなる可能性がなさそうだと感じたら、
もしかしたら感想は初回のみ…って事もあり得るのかも?
最後に余談。あのわんこのキャラクター、実在していたのが一番の驚きでした(笑)