MIU404 8話 感想|新たな道を進んで得た"希望"と"代償"

 

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良い意味でしんどい気持ちにさせる作品ですよね…これ。

そっか、「アンナチュラル」の中堂の連続殺人オタクネタを持ってきたのは

蒲郡小日向文世)という人物を描くために必要なものだったのか…と腑に落ちました。

 

個人的には、二次創作物でよくある自分の好きな作品同士をクロスオーバーさせるなど、

ファンだけが妄想して楽しむような事を公式がガッツリやってしまうっていう手法は、

完全に受けを狙っている感じがしてそこまで好きではなくて。

本作の世界観が食われてしまうのではないかとも、正直ちょっと心配しておりました。

渡された解剖書にミコトの名前があったりとか、

主要メンバーではない刑事がゲストとして登場したりだとか、

きっとどこかで繋がっているんだろうなぁと想像出来るくらいのコラボで

十分だと思っていたので、今回の件はまたあの舞台とキャラクターに会えて嬉しいような、

いや、でもやり過ぎのような…と複雑な心境でいたら…

ただのファンサービスで終わらせない結末にぎゃふんと言わされた気分でした。

 

本作、やはり「分岐点」が軸になっている作品なんじゃないかと思います。

誰と出会うか、出会わないか。この人の行く先を変えるスイッチは何か。

それは中堂にも蒲郡にも当てはまるし、

蒲郡はもう一人の中堂で、

中堂は"もしこうなっていたら=if"を意味する蒲郡でもあったかもしれない。

二人は元々同じスタートラインに立っていたけど、

中堂にはUDIの仲間達がいた一方で、蒲郡のそばには伊吹(綾野剛)がいなかった。

蒲郡は"誰にも助けを求めない"道を選んだ。

 

残された伊吹は伊吹で、機捜隊としてこれからの生活を共にする

志摩(星野源)のスイッチを押した代わりに、

蒲郡のスイッチを押せないまま別れるという代償を得てしまった。

彼の心境を表すのには、まさしくLemonの歌詞がぴったりだったでしょうね…。

放送開始40分が経過してから、今まで恩師だった人が殺人犯だったと判明するまでの

畳み掛け方のスピードがえげつなくて、

その展開の速さに真っ白になって追いついて行けない戸惑いが

伊吹の「え…嘘だよね…?嘘だと言ってよ…」なんて慌てふためいた気持ちと重なるようで、

視聴後はよりグッタリさせられる感覚を覚えました。

「刑事になりたい」という人生における大事なスイッチの一つを押してくれた人ですもん。

子供のように泣きじゃくる伊吹には共感しかない。

声を荒げなくともふつふつと煮え切った感情を滲ませ、徐々に"闇"の一面を覗かせ、

吸い込まれるような目力の演技で見る者の視線を奪う小日向文世さんと、

心の動きを表情や身振り、声の強弱で表現してみせる綾野剛さんの最後のシーン…

大袈裟に見せず、二人の心情が確かにストレートに伝わって来る名シーンでした。

 

スイッチと言えば、伊吹と志摩の立場の逆転劇にもシビれます。

冒頭では盗聴器を仕込んでいる事に気付けなくて落ち込んでいた志摩を

伊吹が共同責任だと言って慰めていたのが、

最後には志摩が相棒に手を差し伸べるほど心強い存在になるなんてズルい。

ファンが熱狂するツボがよく分かっている流れですよ(笑)

主題歌の「お前はどうしたい?返事はいらない」の歌詞が、

黙って俺についてこい的な志摩の頼もしい一面とリンクする所もまた熱い。

 

志摩がいれば、過去の彼みたいに、"こうありたかった自分"を何度も想像しては後悔する事は

ないのだろうなぁと安心させられもしました。

いつも流れる「感電」が、心にぽっかりと穴があいた伊吹をそっと包み込んでくれるような

優しく温かい曲に感じる回でもありました。