silent 10話 感想|好きでいればいるほど辛い
※今回の感想を執筆するのに4時間程度かかったくらいには(遅筆過ぎる!^^;)
文章がめちゃめちゃ長いです。
そして、絶賛ばかりの感想ではございません。
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初めにおことわりさせていただくと…本作は今期の作品群の中では
ずば抜けて"愛しい"作品です。
そして、これはただの個人的な見解でしかないので、
読者の皆様にとってはどうでも良い事かもしれませんが、
現段階では、初回から変わらず本作を「名作入り」にするつもりでいますし、
今年見てきたドラマにおいて、唯一の名作だとも思っています。
しかし…それを踏まえた上で、今回の内容を見て感じた
「こうすれば良かったのかも?」を先に書いておきたいと思います。
個人的には…今回で再び紬(川口春奈)と想(目黒蓮)の関係性にフォーカスを当てていた
内容になっていた所に、ちょっとした"今更感"は覚えてしまったのです。
もう少し言い換えると…「振り出しに戻った」が近いんでしょうか。
というのも、今回の1話前、つまり6〜9話とここ最近は
律子(篠原涼子)と想、律子と華(石川恋)、そして佐倉家と、
どちらかと言うと「紬と想の2人を見守る」側にいる登場人物を
1人ずつ掘り下げる話が続いていて、
各々の関係性を通して、全ての人々に共通する
恋愛を超えた"普遍的な愛"が描かれてきたんですよね。
私としては、この構成が「最終章へとバトンを渡す」には惜しかったのかなぁと思っていて。
“普遍的な愛"が数話描かれてから
1〜4話で取り扱われた"2人の恋愛"に本題がまた戻って、
しかもその話をたった2話でまとめようとしている。
2人の仲を育み、繋ぎ止めてきたのは"音楽"という存在で、
付き合っていると言われてもおかしくないくらい仲が進展しているように見えて、
2人でいる時間が多ければ多いほど「声が聞けない」事実をふと思い知らされては
辛い気持ちが募っていくはずなのに…
“現実"を目の当たりにし、その辛さを最終回前で吐露するのも
展開としては遅いんじゃないか?という感じは否めませんでした。
今までの話も「音のない世界」で生じる"壁"を軸に、
分かりたくても、その人の事をもっと知りたいと思っても
完全には通じ合えないし、伝わり切らなかったが故にすれ違いも起こってしまうという
言葉を交わす事の難しさを描いた"意味のある"内容になっていたので、
構成自体を特に否定するつもりはありません。
それに、今までのそういった描写の積み重ねがあったからこそ、
今回の、萌(桜田ひより)が紬に感謝の言葉を言うくだりや、奈々からの手紙、
時間が経って大人になった今だからこそ分かち合えた奈々と正輝の所に
湊斗(鈴鹿央士)がやってきて、「なんで別れたの!」なんて本音で話せるくだりに、
前回の佐倉家とはまた違ったそれぞれの"雪解け"を感じさせて、
「言葉を交わす事は難しいけれども、
どう向き合っていくかで"可能性"は少しでも残っているかもしれない」という点で
救われた心地にもなれましたしね。
そこで、思うのは…前回の歌詞カードのエピソードを
今回の後に持ってきても良かったのかな?って。
そして、今回の内容はせめて、9話で描いた方が
先ほど書いた「振り出しに戻った」印象もまだ薄れたのかもしれません。
紬と想の関係性も、5話で湊斗とのけじめを描き、6〜7話で奈々と向き合う姿を描いた上で
「正式に付き合い始めた」設定にしておいて…
付き合い出してから徐々に「もう"あの頃"のように好きな音楽を共有出来ない」
「もう好きな人の声が聞けない」事をお互い感じるようになって、
徐々に衝突が起きる変化を描いていって…。
う〜ん、その後の流れはどうすれば正解だったのかが更に分からなくなってくるので、
ただの思いつきで書いた文章として
軽く受け流して欲しいんですが…(汗)(ツッコミポイントも当然出てくるだろうし…)
紬と会わなくなってしまった想が、ある日律子から
「元気にしてる?」「って心配されるの嫌なのは分かってるけど、
想が元気でいてくれたら、お母さんは嬉しいから」というたった二言のLINEが来て。
それで思い立った想が帰省して、あのやり取りがあって、
萌と華と3人でCDを広げては歌詞カードをめくった時に、
「声が聞けない」現状は残念ながらもう変わる事はないけれども、それをゆっくり受け入れつつ、
「あの時の温もりも、思い出も、2人の間で培われた愛も全て失われた訳ではなくて、
今も"違った形"で確かに心の中で存在し続けている」事に気づいてから
紬の元に戻って、2人で腹を割って話し合う…
そんな流れでもアリだったのかと思います。
まぁ、こうして書いた事も、私が想と同じ経験をしていない以上は
安易な言葉にはなってしまうんですけどね。
でも…「もしも今回の内容を"今更感"を覚えさせないように描くならどうするか?」を
考えてみた次第です。
ああ…1つの事を書くのに、あまりにも文章が長くなってしまった…(汗)
要点を絞りきれない所は私の悪い癖ですね…。
という事で、気になった部分に触れるのはここで終わりにして、
今度はグッときた部分について簡潔に書いていこうと思います。
今回は、初回からずっと見てきた視聴者なら唸らずにはいられない、
たくさんの"リフレイン"がなされた回でもありました。
特筆すべき内容として…1つ目にハッとさせられたのは、
ポニーテールにしていた紬の髪を触ってはからかうシーン。
5話の時に湊斗が紬に教えていた「想のタイプの髪型」がポニーテールでしたし、
高校時代も同じ髪型をしていましたよね。
いたずらっ子っぽい表情を浮かべながら、何度も何度も触る想に対して
「ちょっとやめて!w ねぇ〜」って笑いながら注意する紬の2人の姿を見ると、
高校時代でも、たま〜にこうやってふざけ合っていた時が
あったのだろうな…というのが想像出来ます。
でも、だからこそ、"あの頃"とは同じにはならない残酷な現実を
ひしひしと感じてしまうんですよね。
一連の微笑ましいやり取りの後で、「や・め・て!」の次の言葉が
何を言っているのかが分からない苦しみが、無音の演出にして視聴者に共感させる形で
想目線で描かれていったのが、とにかく切ない気持ちにさせられました…。
そして2つ目は、踏切の向こう側にいる湊斗が「想!」とLINEで呼びかけて、
それに対して想が嬉しそうに振り返るくだり。
想の笑顔に、湊斗もつられて笑みを浮かべる様子を見て、
3話の終盤で回想として描かれた、湊斗のワンコのような笑顔…
あのカットを彷彿とさせた視聴者も少なくないはず。
あの時のような表情をまた見られた事が、私も嬉しくてしょうがなかったです。
と同時に、友達同士だったら今回のようにいつでも"あの頃"に戻れるのに、
肝心の恋人同士になると中々戻れないのは…
「音のない世界」で生きながら、それだけ「大切な人とこれからの永い人生を共にする事」
「大切な人の人生も背負う事」に対するハードルは高いという事なのだ…という"差"も
暗喩的に表現されていたように思います。
3話関連で言えばもう1つ、踏切も象徴的に描かれていましたよね。
私は当時の感想でこう書いていて…
・紬と遮断棒を同時に映したカットは、
今まで築き上げてきた紬と湊斗の関係性と、
“青春を共にした同級生"という、輝かしい思い出のまま時が止まっていた3人の関係性が
変わっていってしまうのを示すサインになっていて。
・鳴り響く音は、湊斗が今まで蓋をしてきた感情が
どっと溢れ出してしまうのを示すサインになっているのかもしれない。
当時は湊斗視点で踏切が絡められていたのが、今回ではそれが想に置き換わっていたのと。
加えて、いつの回だったか、「佐倉くん!」と元気に呼ぶ紬の声に、
イヤホンを外して返事をした想のシーンが、
実は音楽を聴いていた"フリ"だったのが今回の終盤で明かされて、
彼女が呼んでくれる自分の名前と、彼女の声がとても大好きで、
聞きたくて聞きたくて堪らなかった…といった2つの"段階"を作ってから、
ラストの「声が聞きたい」に落とし込んだのには、
なんて胸を抉る展開を作るんだ…と慄きましたね。
前々から書いていた事ですが、生方美久さんの脚本は、
とにかく、回想や過去エピソードを現在と鮮やかにリンクさせながら
視聴者に感情移入させる技に長けているんですよね。
冒頭では素人ながら、引っかかった所をつらつらと書いてしまったものの、
私はこの巧みさが好きで、惹かれて、最後まで応援して見続けてきたのです。
あ…ちなみに、SNSでザワついている例の番組はまだ見ておりません。
好評よりもモヤモヤしている意見の方が散見される辺り、
作り手の意図=情報が作品の感想・印象にも影響を及ぼしやすい私としては、
本作を完走してから見た方が自分のためだと判断しましたので…
(それがリタイアの決め手となった作品も過去にあったので…)
最終回を前にして「なんだ…」と考えをガラッと変えてしまう恐れがあると思うと、怖いのです。
“好き"は"好き"のままでいたい…という事で、
どんな答えを導き出すのか、明日じっくりと見守っていきたいと思います。
…感想は、またその日中には投稿出来ないかもしれませんが…(汗)