嘘解きレトリック 5話 感想|慣習を守る義務感からの解放
ミステリーを前後編にすると、大抵は「これなら別に1話完結型でも良くない?」と
言いたくなるものが多いんですが、
本作の場合は前後編にしたのも納得の行く、工夫を凝らした構成になっていました。
後編に入る時に、冒頭に前編のおさらいを入れる事はよくありますが、
感心させられたのは、放送開始8分程度で左右馬(鈴鹿央士)の推理まで描いてみせた所。
前回の要点を踏まえつつ、鹿乃子(松本穂香)の能力のお陰もあって、
昨日のご飯を食べたかどうかを聞く形で、今そこにいる品子(片岡凛)は
昨日会った品子とは別人であると確定した。
そうして辿り着いた推理は…「品子さんは3人いたんだ」。
早い段階で提示する事で、果たして、左右馬の推理は当たっているのか?
もし本当に3人以上いたとするなら、イネ(松浦りょう)にあの時人形を品子だと
勘違いさせるまでのカラクリは?など、残された時間で真相が丁寧に描かれて、
視聴者にとっても、彼らと一緒に"答え合わせ"が出来るんですね。
劇的な展開を作ろうとするがあまり、派生した事件やサブエピソードなどで
物語を複雑に仕立てたり、情報の小出しや後出しジャンケンで引っ張ったりと、
解決に至っても消化不良感が残るミステリーやサスペンスも散見されただけに、
これはよく出来た展開だったな…と思わされました。
原作があるとは言え、漫画だと恐らく数話分にも及ぶ内容を前編・後編で分けて、
どれを削ってどこまで収めるか…がきちんと整理整頓されていたのは、
脚本力あってこそだったと思います。
横溝正史ミステリーに出てきそうな人形屋敷の話という事で、
昭和初期の下町を舞台に、町の人々を巻き込みながらの人情噺の印象が強かった
本作の今までの作風とはかけ離れてしまうのではないか?と少し不安でもあったんですが、
最終的には、ありのままの自分でいさせてくれる人と出会って逞しさが増した鹿乃子が、
“自分"を殺して生きている品子たちの心を救い出し、
品子たちもまた、たまたま聞いた「自分が正しいと思う方向に動く」という言葉をきっかけに
頑なに守り続けてきた慣習から解放されよう・変わろうとするという、
ほっこり温かいストーリーへと着地。
もうこの先も大丈夫だろう…と、今後の展開にも期待したくなった前後編でした。
最初は、人の懐にグイグイ入り込む系の人なのかな?と思いきや、
鹿乃子が何か特別な力を持っている事は何となく分かっていそうなものの、
追求はせず、彼女の想いを尊重してくれる優しい人でしたね。
寺山刑事(正名僕蔵)の頓珍漢なボケと、
キビキビツッコむ雅の掛け合いもテンポ良く、楽しめました。
あのやりとりが1話限りなのは勿体ないような…(笑)
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