コントが始まる 6話 感想|キコリは誰かにとってのホコリ

 

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金の斧と銀の斧という、2つの選択を迫られるコントから始まった今回。

それに絡めて、主観的な目線から見た「こうありたい」気持ちと

現実的な目線から見た「こうしなければならない」気持ちで揺れ動く

真壁(鈴木浩介)と奈津美(芳根京子)の心情が描かれる形で、

物語が繰り広げられていく前半パートが印象的でした。

 

「18から28までと、これから先の10年は、別次元の苦しみだぞ」も、

解散するべきみたいに言うんじゃなかったという後悔から出た

「周りの雑音に流される事なく、愚直に夢を追い続けてきたお前らの方が偉い」も

どちらも真壁の本音だと思うし。

奈津美の、マクベス解散と聞いてホッとしたのも、

この人を支えてあげるのは私しかいないという優しさも嘘ではない。

 

しかし、現実と向き合わなければならない歳なのは事実で。

奈津美は潤平(仲野太賀)と付き合ってきた自分に迷いを見せ始め、

潤平は潤平で、奈津美と真壁のモヤモヤとした想いが、直接的にも雰囲気的にも伝わってしまい、

今までの努力やこれから先の未来をネガティブに捉え始めるようになる…。

 

そんな2人を説得しようと動いたのが、春斗(菅田将暉)って所が良いです。

前回の里穂子(有村架純)との会話で、10年間の頑張りが無駄ではなかったと

気づく時がいつか来るかもしれないと教えてもらったし、

学生時代から彼のどこが好きで、なぜ付き合おうとしたのか理由を知っている彼だから、

せめて2人には、マクベスとして頑張ってきた時の自分(彼)を否定して欲しくないっていう

気持ちが働いたんですよね。

 

下の名前を呼んでくれないと嘆く里穂子のくだりを

ラストでの唐突な「キコリ」呼びに繋げるのも、

なぜか潤平の後ろについていくように歩いていた奈津美の謎を

「壊れたルンバ」で回収したのも面白かったです。

今回のコントが一番、本編とリンクしている気がしました。

 

中でも伏線回収で感心させられたのは…

マクベスの"誇り"→"里穂子"」と役名の"キコリ"を関連づけた事。

ホコリとキコリで一文字違いだから、キコリの方も同じからくりがあるだろうと思い、

並び替えてみた結果が"コリキ"。

最初は「いや長◯小力か!」とツッコミたくなりましたが、

その漢字が「小力」である事に気づき、

ああ、もしかして「小力=小さい力=ささやかな力」に

かけているのか…と、名前の意味に納得出来ました。

 

例え、今までの努力が、社会で爪痕を残せなかったり、

周りに共感されないものだったとしても、誰かにとっては"誇り"。

梨穂子にとっては、絶望的な生活を送っていた自分に生きる希望を見出してくれた

マクベスの3人が誇りなのはもちろん。

真壁にとっても、可能性を信じて

10年間夢を追い続けてきたマクベス…教え子の3人が誇りだし。

奈津美にとっては、時間の流れとともに変わってしまう性格をあえて変えないよう徹し、

恋愛にも芸にも真っ直ぐ向き合ってくれた潤平の存在が誇りで。

そして潤平も、そんな不器用な自分についてきてくれた奈津美の存在が誇りである。

 

試練に立ち向かわなければならない時もあるし、現実的な事を言わざるを得ない時もあるけど、

“頑張ってきた"という事実自体を否定する事はない…。

5人とも確実にバラバラの道に進み始めようとしている図は、

「一つの時代の終わり」「関係性の崩壊の始まり」を想像させられるものですが、

何かが終わる事は決して悪い事ばかりではなく、良い事もあるんだよ?というのを

少しだけ明るく提示してくれたお話でした。

 

そして、中華店での5人の集まり、潤平と奈津美を説得するために尽力した時間、

餃子パーティ、実家の帰省と、

高校の青春時代のような日々を過ごしてきた春斗が、

いざ一人になった時に「自分は何もない」という現実を痛感する姿には、

大人になってからの「あの時は良かったなぁ…」と懐かしむ状態に通ずるものがあって切ないです。

星一つない夜空が彼そのものみたい。

でも、里穂子が言っていたように、何かがきっかけで転機が訪れる時は来ると思いますけどねぇ…。

今はまだ訪れていないだけで。