Dr.コトー診療所2004 特別編 2話 感想|絶望と希望の狭間で
※本作のシリーズは去年夏の再放送で視聴済みですが、特別編「2004」は未見です。
※本作への愛は足りない頭で にしたためたので、
今回からは純粋な感想として書き残していこうと思います。
次回予告もエンディング映像もないまま、突然シャットダウンしたかのように
ぷっつりと幕を閉じる。
こんなにも登場人物に未来の兆しを感じさせない
スペシャルはあっただろうか…と驚かされました。
連ドラから1年経ったスペシャルとなると、主人公達にまた会えて嬉しいという
懐古的な気分に浸れて、何か話が出てくるたびに「そんな事あったよな〜」と笑えて、
イベントがあるにしてもなんだかんだで解決出来る(?)内容が多いイメージなのですが、
本作の場合は連ドラと変わらないくらいの重い話を持ってくるので容赦ないです。
連ドラなら本数が多いから、ぐったりとさせられる回は続くものの
最終的にはホッとする終わり方になるのだろうというある程度の安心感がありますが、
今回に関しては「これはスペシャル内で解決出来るのか!?」という不安の方が大きいのです。
日常を忘れるかの如くお祭り騒ぎを夢中で楽しむ人々の一方で、
頭が病気で蝕まれていく昌代(朝加真由美)のカウントダウンを思わせる対比。
自分が母の異変に気付けなかった事に目を向けたくないからって
「同じ立場」だった父を責めてしまう彩佳(柴咲コウ)と、
悲しい後ろ背中を見せる正一(小林薫)の姿。
そのシーン、2人の様子を延々と映す。
人によってはもしかしたらこれがクドイ演出だと受け取られるのかもしれませんが、
いざ自分が重症の親の子供の立場になって考えてみれば
「あの時ああしていれば」「こうしていたら」のタラレバばっかり
頭の中で反芻してしまうものであって…
それを具現化してみせたようなリアルな長さだったと思います。
うちの母も、歳を取っても全然ボケてないし、週に何回も運動しに行ったりしているけど、
「ピンピンしてる人が病気にかからないとは限らない」んですよね…。
コトー先生(吉岡秀隆)は彩佳に
「辛いだろうから、今回は休んでて良いよ」なんて優しい言葉はかけないけれど、
彼女のやりたい事に対しては否定的な発言はせず、素直に受け入れる。
あの騒ぎを見て怒鳴ったり、説教したりする訳ではなく、いつも見守ってくれている。
しかし時に、医者とはどうあるべきか?というプロの厳しさを教えてもくれるから
作品の中心にしっかりと存在感を残す。
医療ドラマでは珍しい"見守り型"の医者でも、人間性や信念は確かに伝わる…
このさじ加減は中々出来ません。
絶望に追いやられている人もいれば、
絶望した人の姿を見ても「医者になりたい」という強い夢を持つ人もいる。
生きていくとはどういう事か。人生とは何なのか。
そんな事を考えさせられる回でした。
手術シーンに剛洋の作文音読を重ねる演出は、多様性をも表しているようで
ジーンときてしまったなぁ…。